GX実行会議の初会合で発言する岸田文雄首相
=7月27日午後、首相官邸(春名中撮影)
~~
政府が脱炭素社会の実現に向けた対応策を協議する、「グリーントランスフォーメーション(GX)実行会議」(議長・岸田文雄首相)の初会合を開いた。
首相は会議の冒頭で、電力需給の逼迫(ひっぱく)が続く厳しい現状を踏まえて「エネルギーの安定供給の再構築が早急に求められる」と指摘し、原発再稼働など政治決断が必要な項目を明確に示すように指示した。
首相の危機感は妥当だ。足元のエネルギー危機を脱しなければ、その後の脱炭素の取り組みにも大きな支障が生じる。優先順位を明確化することが重要である。
ロシアによるウクライナ侵略に伴い、世界的にエネルギー価格が高騰する中で、欧州では原発を脱炭素電源として再評価する動きが広がっている。資源小国の日本でも安全性を確認した原発を早期に最大限活用できるよう、首相が指導力を発揮してほしい。
首相は会議の中で「1973年の石油危機以来のエネルギー危機が危惧される極めて緊迫した状況だ」としたうえで、「この危機の克服なくして2030年、2050年に向けたGXの実行はあり得ない」と言明した。こうした厳しい危機感を官民で共有したい。
そして8月に開催予定の次回会合までに、原発再稼働などで政治的な決断が求められる項目を洗い出すように促した。GX実行推進担当相に任命された萩生田光一経済産業相(※)は、原発の安全審査を担当する原子力規制委員会の審査効率化などに具体的な手順を示す必要がある。
(※)8月10日の内閣改造で西村康稔経済産業相がGX実行推進担当相を兼任
規制委による原発の安全審査をめぐっては、その審査期間が長期化するなどで、審査に合格し再稼働した原発は全国で10基にとどまり、東日本地域には1基もない。電力自由化で老朽化した火力発電所の休廃止も進み、東日本における電力不足は深刻化している。
こうした中で東日本でも原発を早期稼働すれば、電力不足の解消や安定供給に資するだけでなく、大幅な値上がりが続く電気料金の引き下げ効果なども期待できる。岸田政権には原発再稼働に向けた具体的な行動を求めたい。
GX会議では官民が脱炭素に向け、来年からの10年間に取り組む工程表を策定することも決めた。原発を今後も脱炭素電源として活用するため、その新増設や建て替えなども盛り込むべきだ。
◇
2022年7月29日付産経新聞【主張】を転載しています